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コラム

不合理規制の例(タクシー特措法)

お知らせの更新が2年も滞っておったため、一応アクティブであることをお知らせするために一つ投稿します。

2023年来、ライドシェアに関して、政府の規制改革推進会議での議論に専門委員として参画させていただいた。しかし規制改革はうまくいかず、海外のような利便性の高い移動手段であるライドシェアは実現できていない。

直接ライドシェアの話ではないが、ライドシェアの検討において直面したタクシー規制の中で、タブー視されているが、鮮やかに不合理な規制がある。タブー視されているため公式にあまり発信の機会がないのだが、一応ここに書いておく。

タクシーには、タクシー特措法(特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法)という参入規制を定める法律がある。この法律は、タクシーが「供給過剰」とみなされる地域を(1)「準特定地域」として指定し、原則として新規タクシー会社の参入を禁止し、(2)準特定地域の中で運行している車両数が(政府が計算する)「必要車両数」に満たない台数分だけ許可を与える、というルールになっている。
準特定地域は全国に600強ある営業区域のうち135の区域が指定されている(数字は最新ではないかも)。これには東京、神奈川、大阪のほとんども含む。つまり、全国的にこれだけタクシー不足と言われているのに、法律上は4分の1の地域がタクシー供給過剰ということになっている。

問題1 準特定地域の指定基準
なぜこんなことになるかというと、基準がおかしいからだ。準特定地域は、「日車実車キロ又は日車営収が、平成13年度と比較して減少していること。」に該当すると指定される。「日車実車キロ」は一日にお客さんを乗せて走っていた距離のことで、「日車営収」は一日あたりの収入である。なお、平成13年度は24年も前で、こんなに古い基準を使っている法令は見たことがないが、小泉政権でタクシー規制が緩和される前の時点ということのようである。

このうち、「日車営収」は料金上昇等もあったので平成13年度より増加している。一方で、「日車実車キロ」は平成13年度と比較して減少しており、かつ今後も増えることが大変むずかしい。なぜなら、労働改革によって労働時間が減少しているからだ。タクシー運転者(男)の年間労働時間は、平成10年の202時間/月から令和5年189時間/月まで減少している。つまり、タクシー運転手の労働時間が減っている以上、一日にお客さんを乗せて走っている距離は減るに決まっている。原因は労働時間なのに、それを法令上はタクシーの「供給過剰」と評価して、参入規制をしているのである。これは誰が見てもおかしい。
例えば、時間あたり実車キロに基準を変える等の工夫はできるはずだが、この制度改正は聖域とされているようである。

問題2 必要車両数の基準
次に、準特定地域の中でも、実際に運行している車両数が「必要車両数」に満たない台数分は許可を受けることができる。この必要車両数は、「「必要車両数」=輸送需要量÷(総走行キロ×実車率÷延べ実働車両数)÷365÷実働率」で計算される。計算式の詳細はともかく、この「÷実働率」に問題がある。

この実働率は、タクシー会社が保有する車両のうち、ドライバーが運転して実際に稼働している車両の割合だ。最近のタクシー不足というのは車両不足ではなく、ドライバーが不足することによる実働率の低下が原因だ。過去には90%程度あったのが現在では60%を割り込んでいると言われている。しかし、この「÷実働率」は、「90%又は平成13年度実績のいずれか高い値」を使うというルールになっている。つまり、実際は60%なのに90%で割算することになっている。大きい数字で割れば、解答は小さくなる。つまり、「必要車両数」は3割程度小さく算出される。そうすると、新規許可数も少ないかゼロになる。これにより、新規参入の枠が閉ざされる。

これほど誰が見ても不合理な規制は珍しいと言えるが、タブー視されている領域にはこのような規制がまだまだ残っている。こうした規制は一つずつ合理化していかなければならない。