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コラム

法とイノベーション(1)オンライン服薬指導

3月19日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(薬機法)の改正案が閣議決定され、国会に提出された。ここで、オンライン服薬指導の実現に向けた制度改正の方向性が示された。

オンライン服薬指導とは

薬剤師が患者に薬を提供する際、健康状態を確認したり、薬の副作用を患者に対して説明する「服薬指導」を行うことが法律上義務付けられている。ほとんど全ての人が受けたことがあるだろう。

この服薬指導は、現行法上、「対面」で行うことが義務付けられている。つまり、患者は直接薬剤師と会って指導を受ける必要があり、スカイプなどのテレビ電話で行うことは認められていない。今回、これを可能とする法案が示された。

医師がオンラインで診療を行う「オンライン診療」は、すでに法律上認められている。そのため、オンライン服薬指導が実現すれば、スマホやスカイプなどを使って、医師による診療、薬剤師による服薬指導、薬の配達という一貫した医療を、病院や薬局を訪問することなく自宅や職場において受けることが可能となる。

例えば、身体の不自由な高齢者の方は、今は服薬指導を受けるために薬局まで薬を取りに行く必要があるが、オンライン服薬指導が解禁されれば、自宅にいながら受け取れる。なお、薬剤師が住居を訪問する制度もあるが、薬剤師の不足により十分な対応ができていない。また、若いビジネスマンや育児・仕事を両立している女性など、多忙な人の中にも、病院や薬局に行く時間が無いという人も多い。私自身、毎日薬を飲んでいるが、薬が切れたのに薬局に行けないことがよくある。もし、オンライン服薬指導が解禁されれば、このような不健康な状態はかなり減るはずである。

もちろん、急病の場合や一部の重篤な疾患など、すべてをオンラインで行うわけにはいかないし、患者を保護するためのいくつかの要件も必要であろう。しかし、オンラインで一貫した医療が可能となれば、多くの人が救われるはずである。

今回、厚生労働省がその実現に踏み切ったことは、大変重要な一歩であり、画期的な制度改正である。

これまでの進捗

しかし、重要なのはこれからである。法律案が提出されただけで今国会でまだ成立はしていない。また、仮に法案が成立したとしても、具体的な詳細要件はこれから検討が進められ、省令などで決まっていくことになっている。

実は、オンライン服薬指導はすでに一部解禁されている。地域限定で規制を緩和して実証を行う国家戦略特区制度において、愛知県、福岡市、兵庫県養父市において、昨年夏から実証が始まっている。しかし、住居と薬局の距離が「相当程度長い」といった要件が定められ、離島など、極めて限定された場面に限られることになってしまった。その結果、厚生労働省のHPによれば、昨年11月末時点でたった6件の実績しかなかったようである。6件では実証にならない。つまり、実証をやるための適切なルールになっていなかったと考えられるのである。

制度改正をする際は、新たな技術やサービスを認めることで国民の利益や利便性を図るという積極的な観点と、人々に何らかの事故が起きることを防ぐといった消極的な観点の両面をしっかりと検討することが必要となる。しかし、政府においては後者の勢力が常に圧倒的に強く、慎重すぎる制度改正になることが一般的である。国家戦略特区におけるオンライン服薬指導はまさにこの典型例であった。

望ましい方向性

今回の薬機法における制度改正の議論においても、同様に厳格すぎる要件となってしまうのではないかという懸念がある。しかし、今回は何とか国民の利便性につながる利用価値の高い制度としてほしい。

例えば、住居と薬局の距離が長いという居住地の要件は付すべきではない。薬局までの距離が長い人だけが困っているわけではないからである。

また、冒頭の厚生労働省の報告書では、オンライン服薬指導ができる薬剤師を「かかりつけ薬剤師」に限定すべきとされている。どうなると「かかりつけ」なのかという定義もこれからの検討であるが、これも厳格な要件とすべきではないだろう。調剤報酬では「かかりつけ」が定義されているが、3年以上の薬剤師としての経験、同じ薬局に1年以上勤務している、医療の地域活動に参画しているなど、かなり厳格な要件となっている。このような厳格なものではなく、例えば、初回の服薬指導は対面とするという程度とし、その後は同じ疾患であればオンラインでの指導が認められるべきである。

そもそも、医師による診療とは異なり、薬剤師による服薬指導は、処方箋と保険証を持っていけば本人でなく家族などでも受けることができる。つまり、今でも必ずしも対面ではないのである。また、医師による診療と比べて、対面である必要性が小さく柔軟な制度改正をしやすいはずである。

この問題は、医師や薬剤師だけの問題でなく、すべての国民の生活に直結する重要な問題である。そのため、厚生労働省、医師、薬剤師などが密室で決める問題ではなく、患者の健康にとって最も適切なルールは何かという観点からオープンな場で検討されるべきである。そして、できるだけ多くの人々が関心を持ってウォッチしていただきたい問題である。

患者の利便性と安全性の適切なバランスがとれたルールができることを強く期待したい。