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コラム
法とイノベーション(2)電動キックボード
海外で、電動キックボードが流行っている。サンフランシスコやパリなどでは、街にたくさんのポートが設置されていて、アプリで簡単に乗れるらしい。米国のBirdという電動キックボードのシェアリング会社は、史上最速でユニコーン企業になったとのこと。
私も先日試乗させてもらったが、これが本当に楽しい。スーツのまま爽快に乗れるし、すぐに乗りこなせる簡易さがある。海外で流行するのもよくわかる。駅から目的地までとか、今まで徒歩やタクシーで移動していた数キロの距離は、もしこれがあったら切り替えると思う(猛暑日とかは無理だけど)。こうした楽しく便利なものが生まれるというのは大きなイノベーションだ。
これは高齢者の移動手段にもなると強く感じた。電動アシスト自転車と比較すると、軽いし、小さいし、速度制限をつけられるし、ともかく乗りやすく安全だと思う。免許返上をした高齢者の代替手段になるのではないかと思う(歩行困難なレベルの高齢者は無理だが、ある程度動ける高齢者なら乗れると思う)。
外国人は乗り慣れているので、外国人観光客も多く利用することになるだろう。そうすれば、今各地で問題になっている観光客の急増による渋滞の緩和にもつながるはずだと思う。
なぜ日本で普及していないかというと、現在の法律では原付自転車に該当してしまい、車道しか走れないから。電動キックボードはスピードが遅いので、車道しか走れないのでは狭い道路や車が多い道路ではかえって危険だ。そのため、欧米のように普及させるためには、路側帯も走れるとか、自転車レーンでも走れるとか、一定の制度改正が不可欠となる。欧米では、自転車に位置付けられている国と、電動キックボードのための新たなルールが設けられている国がある。
もちろん、例えばいきなりどんな歩道でも走れるようにしてしまったら混雑地域では危ないし、安全も確保できるルール設計を考えないといけない。こういう楽しいイノベーションには安全性の問題がつきものであり、当然安全を徹底しないといけない。ただ、道路の安全性が後退する可能性があるというだけで思考停止するのでなく、十分な検討が行われるべきだ。いま、いくつかの企業で実証が行われている。企業側としても、客観的でバイアスのかかっていない実証データを政府に提供すべきだし、公益性を考え抜いた政策提言をしていくべきである。その上で、官民が一体となって適切なルールを形成していけたら素晴らしいと思う。
電動キックボードは、史上最速のユニコーンが出現するほどのテクノロジーで、実際に非常に楽しく、高齢者の移動手段や外国人増加といった日本の社会課題の解決にもつながる。しかし法の制約がある。
まさに「法とイノベーション」の最前線だ。